食事について
食事は、生命を維持するうえから欠くことはできませんが、同時に、高齢者の方にとって一番の楽しみでもあります。
口を動かすと唾液が分泌され胃が活動を始め、膵臓・肝臓が消化の準備をするというように、食事をとると体全体が相互に関連し合いながら、活性化し、元気になります。このことからも、口から食事をとることは大変重要だといえます。
また、ものを噛んで食べることは、脳への刺激も生まれ認知症予防にも効果があるといわれています。
しかし、何らかの障害が起こって介護が必要になり、一人で食事がとれなくなると意欲が減退し、自立を阻害してしまいます。状況改善のためにも、残存機能を生かし、一人でも食事がとれるような自助具の利用や工夫が大切です。
1.食事をするときの姿勢について
要介護であっても端座位が可能であれば、できる限り椅子や車椅子を使う方法がよいでしょう。やむをえずベッドの上で食事をとるときは、ギャッジアップしてオーバーテーブルを設置することをおすすめします。
また、布団の上で食事する場合でも姿勢保持器などを利用すれば、座位を保ことができます。
2.食事方法を改善するための用具選択のポイント
○スプーン、フォークなどを持ちにくい場合
・スプーンやフォークの持ち手が持ちやすく工夫されたものや、軽いものを選ぶ
○皿から食べ物をすくったり、刺したりしにくい場合
・スプーンやフォークの先端の形状や長さなどを考慮する
・食べ物が引っかかりやすい形の皿や、皿を動きにくくする滑り止めマットなどを利用する
・予め食べ物をすくったり、刺したりしやすい形に整える
○口まで食べ物を運びにくい場合
・スプーンの柄の長さが長いものや角度が曲げられるものにする
・スプーンの先端がロヘ向きにくい場合は、スプーンの先端が丸く、どこから入れてもよいものにする
○食べ物をこぼしてしまう場合
・エプロンを利用する(手作りするなどの工夫をするのもよい)
○口から摂取しにくい場合
・口が開きにくいとき(リウマチなど)は、スプーンの先端の丸いものがよい
・スプーンやフォークを口に入れることができても口から抜きにくい場合は、先端の形状が平らなものを利用する
・口の周りに麻痺がある場合は、口からこぼれやすいのでエプロンなどを利用する
3.食事方法を改善するための用具
何ができないかをチェックをして、それを補う用具を選びましょう
○スプーン、フォーク(指先の力が弱い方)
・柄の部分が太く、軽くできているもの
・刺したり、すくったりが一本で可能なもの
・手の障害に合わせて持ちやすく、食べやすいもの
→握る部分の形が自由に変えられるもの
→曲がった形のスプーン、フォーク、ナイフ
→和食を楽しめるスプーン、フォーク
→スプーン、フォークを握らなくても使えるホルダー(角度が調節できるものもある)
○食べやすく、すくいやすい、こぼれにくい食器
・皿の縁が内側に緩やかに傾斜し、皿を斜めにしなくてもすくいやすいもの
・木製とメラミン樹脂製があり、メニラミン樹脂製のものは食器乾燥機の使用もできます。また、腕がうまく上がらない方にも向いています。
→手前にひきつけやすい半月型の皿
→おにぎり型で、片手でも持ちやすいお椀
→容器、食器類が滑らない滑り止めマット(角型・丸型・ロール状)
→両面に吸盤のついた食器・調理台固定マット
→コップやグラスを持ちやすくするコップ・グラスホルダー
→衝撃に強く、脚が握りやすくなったグラス
○エプロン
→食べ物をこぼしても受け止められるポケット付きのエプロン